| 有明・諫早 夏の攻防(朝日新聞 8月19日)
<環境団体「大調査」 現れ消える「海水酸欠の塊」堤防前で発生しやすく>
環境保護団体の日本自然保護協会(東京)が、有明海沿岸の漁民と一緒に海に出て、「ありあけ大調査」と名付けた海洋調査を続けている。海水が酸欠状態になる貧酸素水境が短い周期で生まれ、特に、諫早湾干拓の潮受け堤防前で発生しやすくなっていることが明らかになってきたという。有明海異変に干拓が関与している「疑惑」が、さらに強まっている。
<現れ消える「海水一酸欠の塊」堤防前で発生しやすく>
調査日には、福岡、佐賀、熊本、長崎の4県漁民約100人が一斉に30〜40隻の漁船を出す。採水地点は、有明海入り口の熊本県沖から奥の佐賀県沖まで77ヶ所。行政の調査ポイント数を上回る規模だ。6月からすでに計5回。6回目が24日に予定されている。
<不十分な行政>
貧酸素水隗は、海の汚れを浄化するアサリやタイラギなどを死なせ、海水を富栄養化させる。調査の狙いは、その水隗発生の時期や頻度、場所の特定だ。
昨年の環境省の調査では、1カ月ほど好天が続き、海水がかき混ぜられない時に発生することが確認されている。だが、調査は11地点で月1回のペース。さらに短期間ではどうなるか、はっきりしなかった。水産庁なども測定はしているが、貧酸素水隗に絞った調査ではなく、データがそろっていない。だが、タイラギなど二枚貝が死滅した原因を調べている長崎、福岡両県はその測定結果から、「タイラギの斃死(へいし)と貧酸素水魂の発生に、直接の因果関係があるとは十分に説明できない」という見解を出した。行政のデータでは、死滅時に貧酸素水隗が見つかっていないからだ。
<短期間に発生>
ところが「ありあけ大調査」では、2週間で貧酸素水隗が現れては消える現象が繰り返されることがわかった。
例えば、海水1リットルに溶けた酸素の濃度(DO)が4・3ミリグラムを切る貧酸素水隗(水産資源保護協会は、「内湾漁場の夏季底層において最低限維持しなければならない酸素濃度」を4.3mg/Lと定めている)は、7月20日にはほとんどなかったが、2週間後の今月3日には約20地点に増えた。
調査責任者の一人、同協会の程木義邦・研究員は「ちょっと好天が続いただけで貧酸素水隗は発生する」。二枚貝の死滅時期に貧酸素水隗がないとする長崎県などの見方にも、「調査間隔が開きすぎて確認できなかっただけ。むしろ、斃死と貧酸素は結びついているとみるべきだ」と話す。
また、行政は水門そばの観測が十分でないが、この調査では、水門の手前50メートルでも観測。3日にはそこでのDO値が1・81、2・15ミリグラム(水産資源保護協会「2000年度 用水基準」によると、底生魚類と甲殻類の致死濃度がそれぞれ2.1mg/Lと3.6mg/L、魚類・甲殻類および貝類の生理的変化を引き起こす臨界濃度がそれぞれ4.2mg/Lと3.6mg/Lとされている)と、最悪の値が出た。程木氏は「諫早の堤防前が貧酸素の発生源だとすれは、干拓が有明海異変の主犯だという疑いは強まった」と話す。
異変の原因を調べている農水省の第三者委員会も貧酸素水隗に注目する。同委のメンバー、須藤隆一・埼玉県環境科学国際センター総長は「行政の調査は回数や規模が不十分。(ありあけ大調査で)きめ細かなデータが得られたなら、委員会でも参考にすべきだ」と話した。
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