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トップ漁民ネット通信>(第15号)<報告>原因裁定と農水省交渉

【 目 次 <第15号> 】

<報告>原因裁定と農水省交渉

前回の通信(7月)から今日までに幾たびかの交渉が行なわれてきました。そこで、その経過を以下に報告します。

1.原因裁定について

 第二回目の審問が、7月28日に行なわれました。福岡漁連からも別途原因裁定の申請がありましたが、内容が同じということで、合流して審査することになり、最初に福岡漁連会長のコメントを代理人が読み上げました。続いて、第一回の審問で委員長から指摘された点について、双方が説明を行った後、3名の弁護士から意見陳述がありました。
 公調委からは、
@工事の流れにあわせて被害の主張をすること
Aスパイラル論の各因子についても、有明海という広い範囲での議論ではなく、特定の程度は別にしてより具体的に主張すること、
を求められました。そして、主張に必要なありとあらゆる資料をできる限り集める必要から、そのためには相当の準備期間が必要だろうとの判断で、予定されていた9月1日の審問は進行協議(事務的な摺り合わせ協議)へと変更になりました。そして第三回審問の期日は、10月21日となりました。現在、9月1日の進行協議の結果も踏まえた準備作業が進んでいますが、次回審問までに論点は出し尽くされ、順調に審査が行なわれるものと思われます。

2.農水省交渉

 公調委での審査にあわせて農水省交渉も行われてきました。古くなった情報もあります ので、項目別にまとめます。

2-1 ヒアリング調査(水産庁)

 既に調査を受けた方々もおられるので古い話になりますが、9/1の段階では、
@データ収集は9月第2〜3週までに。その後の集計は未定
Aノリについては、ブロック別に熊本・福岡・佐賀が各3漁協、長崎が1漁協。漁船漁業はいろいろ難しい。
B(調査票の送り先が漁協になっている場合があるとの指摘に対して)→その場合には 封印するなどの措置を取るよう指導する
C調査結果は、環境省の有明海・八代海総合調査評価委員会にも提出する。また、みなさま(有明再生全国ネット)にも提供する。
 といった回答がありました。

2-2 浮遊物問題(水産庁)

 7/28の交渉では、7/23に記者発表された内容(下記、報道資料を参照)を争点に議論が集中しました。その後、8月25日に熊本県水産研究センターに行き、説明を求めました。説明を通じて明らかとなったことは以下のとおりでした。

  1. 謎の浮遊物に関しては、熊本と長崎しか、分析してなくて、佐賀・福岡に至っては何もしてないこと
  2. 熊本では元素分析と鉱物分析をしたが、長崎では元素分析しかしていないこと
  3. 謎の浮遊物に関して4県で合同の会議や研究をしたわけではなく、熊本と長崎が独自にやった分析を羅列して文章にして発表したに過ぎないこと
  4. 謎の浮遊物については、(動物性由来か植物プランクトンかも含めて)実は何も分かっていないこと
  5. 「ゴカイ」の卵というのも一つの可能性としてあげたに過ぎないとのことで、7/23記者発表とはずいぶん乖離が見られたこと

(7/28の農水省交渉:写真提供  さうすウェーブ)

 これに対して、この不誠実な7/23結果概要の撤回を強く求めましたが、無回答でした。
 そこで、説明会の開催などの要請を行い、9月10日までに要請に対する回答をすると約束 しました。
 9月1日の農水省交渉では、「同じ行政職にある者として7/23記者発表はそれなりの 根拠があってなされたものと信じているが、もし皆さんに『実際のところは判らない』など と答えたことが事実なら問題だと思うので早速確認する。今後については9/10の熊本県 の回答を待ちたい。」(水産庁)とのことで、9/10の回答待ちという形になりました。
 その9月10日の熊本県水産研究センターの回答は以下のとおりでした。

  1. 「謎の浮遊物」の発生原因を特定するまでには至っていないので、その具体的な再発防止策も見出せていない。
  2. 動物性由来の可能性が高いと判断した根拠は、熊本大学の浅川教授の分析結果から、その構成がタンパク質と糖からできていることが明らかとなったこと。
  3. 石灰粒子含有について→含有しているカルシウムは、酸化カルシウム、水酸化カルシウムではなく、自然界に大量に存在する炭酸カルシウムと考えられる。土壌改良剤に含まれる石灰との関係については、回答する立場にない。
  4. 聴き取り調査について→熊本県の有明海沿岸22漁協と八代天草沿岸4漁協から原則1漁協あたり1名聴き取り調査を行った。例年も網が汚れることがあるとの回答は、33人中4名、以前も浮遊物を見たことがあるとの回答は、33人中10名。ただし、今年と同じものかどうかという点については、この調査からは不明。
  5. 底生生物の生殖活動に伴うものが大量発生した原因→今年4月24日から5月7日の熊本市沖の水温が平年より約1.4℃高めで推移しているが、これが産卵への刺激を与えたとも考えられる。
  6. 今後の出現可能性は分からないが、漁業被害を防ぐために漁業者への迅速な情報提供を行っていきたい。
以上がこれまでの経過です。今後は、太田先生の意見を伺い、説明会へと進んでいく予定です。

2-3 導流堤・潜堤問題(農村振興局)

 7/28交渉では「漁民の同意なしに着工しない」という要望を九州農政局に伝え確認することを約束しましたが、9/1交渉では単に伝えただけであることが明らかとなりました。更なる追求に対しては、「今後とも農政局として3県漁連に説明して了解を頂けるよう務めていくということを確認した」という回答に止まりました。しかし、「3県漁連からは、導流堤だけでなく潜堤もまだ了解は頂いていない」「漁連の了解なしに行なうことは避けなければならない」という回答もありました。

2-4 調整池水質問題(農村振興局)

「本明川の水質を反映しているだけ」というこれまでの公式見解を繰り返すばかりでしたが、 この見解はもはや通用しないことが浮き彫りになりました。

次回10月21日の公調委審問並びに農水省交渉が注目されます。


<報道資料>

平成15年7月23日

第2回有明海で発生した粘着状浮遊物に関する関係機関担当者会議結果の概要について

 5月上旬から中旬にかけて有明海で問題となった粘着状浮遊物の発生原因について検討を行いました。その結果について下記のとおりお知らせします。
  (中略)

4.検討結果(粘着状物質の主体となる物質の特定について)

(1)由来について
 顕微鏡観察結果や成分等の分析結果から、主体となる粘着状物質は天然有機物であるが、海藻類や植物プランクトン由来の可能性は低いと考えられる。
 また、多毛類(ゴカイなど)や腹足類(巻貝など)の卵嚢塊の中に粘着状浮遊物と同様の性状(アリカリ溶液に溶けにくい)を示すものが見つかったことから、動物性由来と考えられる。

(2)例年の粘着状浮遊物の状況との比較について
 聞き取り調査で、「この時期もしくは秋に、同じような物質で網が汚れることがある。」との回答も得られており、今年は、海況等の影響で例年よりも大量に(一斉に)介類や底生生物の生殖活動に伴うものが発生したものと考えられる。

5.まとめ

 有明海において、平成15年5月6日に発見され、5月20日頃まで発生・継続が確認された粘着状浮遊物は、介類や底生生物の生殖活動等に伴って海水中に放出された粘着物が、変質しながら海底上や海水中を浮遊する間に、底泥や動・植物プランクトン等が付着したものと考えられる。